このHowtoでは、Armadillo-IoT G3/G3L(以下Armadilloと記載)で3G/LTEを使用する際、設置場所決定に必要な参考情報をご紹介します。
概要
Armadilloの通信手段として3G/LTEを使用する際、通信を安定させるために設置場所の調査は重要となります。
今回は参考として、以下の情報の調査方法を記載します。
- サービスエリア
- 電波強度
- 基地局,キャリア情報
通信モジュールへのATコマンド実行方法
「概要」で記載した情報名のうち「電波強度」「基地局,キャリア情報」は、通信モジュールへATコマンドを実行することで調査可能です。
ATコマンドの実行方法やコマンド詳細については、以下の記事を参照してください。
「Howto:3G/LTEモジュールの設定を確認・変更する「ATコマンド」の実行方法」
サービスエリア
サービスエリアとは、3G/LTEなどの通信サービスを利用できる地域のことです。
DoCoMo,KDDI,Softbankの各キャリアは、サービスエリアを可視化したマップ「サービスエリアマップ」を提供しており、各キャリアのサイトから閲覧可能です。
サービスエリアマップを閲覧すると、3Gや4G/LTEの利用可能地域が色別で地図に表示されるため、簡単に確認可能です。
以下に各キャリアのサービスエリアマップを記載します。
キャリア名 | URL |
---|---|
DoCoMo | https://www.docomo.ne.jp/area/?icid=CRP_TOP_to_CRP_AREA |
KDDI | https://www.au.com/mobile/area/ |
Softbank | https://www.softbank.jp/mobile/network/area/ |
お使いのSIMに合わせたキャリアのサービスエリアを確認し、Armadilloを設置する地域が3G/LTE通信可能かを確認してください。
電波強度
Armadilloを室内や遮蔽物の多い箇所で運用する場合、サービスエリアの条件が合っていても接続が不安定になることがあります。
Armadillo設置後に電波強度を取得することで、電波状況が運用可能レベルであるか確認できます。
RSSIとdBm
RSSIとdBmは共に信号強度を表していますが、以下のような違いがあります。
- RSSI : 相対的な指標
- dBm : mW単位の絶対値
電波強度は、RSSIとdBmの関係から取得することができます。
ArmadilloにインストールされているModemManagerでは、取得できるrssi値(0~31 or 99)を百分率に換算して表示しています。
RSSIとdBmの関係は以下です。
RSSI値 | dBm |
---|---|
0 | -113dBm or less |
1 | -111dBm |
2...30 | -109dBm... -53dBm |
31 | -51dBm or greater |
99 | Not known or not detectable |
ModemManagerのコード箇所は以下辺りです(当社提供のものとバージョンは異なりますが、処理は同じです)。
https://github.com/openshine/ModemManager/blob/master/src/mm-broadband-modem.c#L1365
取得したRSSI値での判断は環境依存の部分が大きいため、最終的な決定は実運用側で行う必要があります。
参考として「指標例を記載しているサイト」を利用すると以下のような指標例となります。
dBm | 接続状況 |
---|---|
-109...-95 | Marginal |
-93...-85 | OK |
-83...-75 | Good |
-73...-53 | Excellent |
また、ModemManagerで得られる結果に反映させた場合は以下のような指標例となります。
取得値 | 接続状況 |
---|---|
0 〜 30程度 | Marginal |
33 〜 46程度 | OK |
50 〜 63程度 | Good |
66 〜 100程度 | Excellent |
データ取得
電波強度を確認するために必要なデータを取得します。
今回の例では、2つの確認方法について記載します。
- mmcliコマンドを用いた取得
- ATコマンドを用いた取得
mmcliコマンドを用いた取得
ModemManagerのコマンドラインツールであるmmcliを使用することで、3G/LTEの電波強度を取得可能です。
SIMを挿入した状態で以下のコマンドを実行し、「signal quality」の数値を確認します。
[armadillo ~]# mmcli -m 0 | grep "signal quality"
| signal quality: '60' (recent)
ModemManagerで得られる結果に反映させた指標例を確認し、運用可能な電波強度であるかどうかを判断してください。
ATコマンドを用いた取得
ATコマンド「AT+CSQ」で「RSSI値」を取得します。
RSSI値は「3G/LTE接続無し」「SIM無し」状態でも取得可能です。
AT+CSQのフォーマットは以下の通りです。
+CSQ: <rssi>,<ber>
前述の「通信モジュールへの接続」にて記載した方法で3G/LTEモジュールに接続し、AT+CSQを実行してください。
以下に実行例を記載します。
AT+CSQ
+CSQ: 23,99
OK
dBmと実運用側で決定した指標を確認し、運用可能な電波強度であるかどうかを判断してください。
対策
電波強度が低い場合、「Armadilloの設置場所を移動する」または「アンテナを延長する」対策が考えられます。
延長コード等をご希望の場合は以下よりお問い合わせください。
基地局,キャリア情報
運用可能レベルの電波強度が取得できた場合でも、使用しているキャリアの電波が取得できているとは断定できません。
基地局,キャリア情報情報を取得することで、想定しているキャリアの電波を取得できているか確認可能です。
Armadilloが取得している電波の基地局,キャリア情報は「MCC」「MNC」を取得することで判別可能です。 各名称の説明を以下に記載します。
- MCC : 運用地域を示すコード
- MNC : 電気通信事業者を示すコード
MNCについてArmadilloが対応している各キャリアの値を以下に記載します。
MNC | キャリア名 |
---|---|
10 | NTT DoCoMo |
20 | SoftBank |
50,51 | KDDI |
各Armadilloごとの確認方法を以下に記載します。
G3
ATコマンド「AT^SMONI」からMCC,MNCを確認可能です。
コマンド結果のフォーマットは以下の通りです。
^SMONI: ACT,UARFCN,PSC,EC/n0,RSCP,MCC,MNC,LAC,cell,SQual,SRxLev,PhysCh, SF,Slot,EC/n0,RSCP,ComMod,HSUPA,HSDPA
以下にコマンド実行例を記載します。
AT^SMONI
^SMONI: 3G,10736,269,-4.0,-68,440,10,040F,21201E4,16,47,LIMSRV
OK
上記から"mcc"=440(日本),"mnc"=10(NTT DoCoMo)であることが確認できます。
その他取得データ詳細については、「PDS6-J」ATコマンド仕様書を参照してください。
G3 M1
ATコマンド「AT+QENG」からMCC,MNCを確認可能です。
実行結果のフォーマットは以下の通りです。
+QENG:
"servingcell",<state>,"WCDMA",<mcc>,<mnc>,<lac>,<cellid>,
<uarfcn>,<psc>,<rac>,<rscp>,<ecio>,<phych>,
<sf>,<slot>,<speech_code>,<comMod>
以下にコマンド実行例を記載します。
AT+QENG="servingcell"
+QENG: "servingcell","NOCONN","WCDMA",440,10,40F,21201E4,10736,269,0,-109,-10,-,-,-,-,-
OK
上記から"mcc"=440(日本),"mnc"=10(NTT DoCoMo)であることが確認できます。
その他取得データ詳細については、「Quectel_EC2x&EG9x&EM05_QuecCell」ATコマンド仕様書を参照してください。
G3L / A6E Cat.1 モデル
ATコマンド「AT^SMONI」からMCC,MNCを確認可能です。
実行結果のフォーマットは以下の通りです。
^SMONI: ACT,EARFCN,Band,DL bandwidth,UL bandwidth,Mode,MCC,MNC,TAC,Global Cell ID,Physical Cell ID,Srxlev,RSRP,RSRQ,Conn_state
以下にコマンド実行例を記載します。
AT^SMONI
^SMONI: 4G,276,1,15,15,FDD,440,10,3091,0B1ADD00,456,42.00,-88.10,-8.30,NOCONN
OK
上記から"mcc"=440(日本),"mnc"=10(NTT DoCoMo)であることが確認できます。
その他取得データ詳細については、「ELS31-J」ATコマンド仕様書を参照してください。
A6E Cat.M1 モデル
ATコマンド「AT^SMONI」からMCC,MNCを確認可能です。
実行結果のフォーマットは以下の通りです。
^SMONI: ACT,EARFCN,Band,DL bandwidth,UL bandwidth,Mode,MCC,MNC,TAC,Global Cell ID,Physical Cell ID,Srxlev,RSRP,RSRQ,Conn_state,CINR
以下にコマンド実行例を記載します。
AT^SMONI
^SMONI: 4G,276,1,15,15,FDD,440,10,3091,0B1ADD00,456,42.00,-88.10,-8.30,NOCONN, 0.00
OK
上記から"mcc"=440(日本),"mnc"=10(NTT DoCoMo)であることが確認できます。
その他取得データ詳細については、「EMS31-J」ATコマンド仕様書を参照してください。