ECHONET Liteの低圧スマート電力量メータクラス(EOJ 0x0288)を実装したサンプルアプリケーション(日新システムズ「EW-ENET Lite」)を使って、ECHONET Liteコントローラと低圧スマート電力メータクラス間をWi-SUNで通信する手順を紹介します。
2台のArmadillo-Box WS1を用意し、1台をスマートメータ(Wi-SUNコーディネータ)、もう1台をECHONET Liteコントローラ(Wi-SUNデバイス)に見立て、相互の通信をWi-SUNで行います。
評価には、日新システムズが提供するECHONET Lite対応ミドルウェア「EW-ENET Lite - Armadillo-Box WS1用評価版」(バイナリ)と、 "ECHONET Lite 低圧スマート電力量メータクラス"のプロパティを実装したサンプルアプリケーションを使用します。
EW-ENET Liteの詳細については EW-ENET Lite (ECHONET Lite対応ミドルウェア)を参照してください。
ECHONET Lite規格については、 エコーネットコンソーシアムの エコーネット規格(一般公開)等を参照してください。
1. ユーザーランドイメージ書き換え
2. 動作確認手順
3. リファレンス: デバイスシミュレータ(bdev_demo)の設定・動作について
4. リファレンス: コントローラ(broute_demo)の設定・動作について
1. ユーザーランドイメージ書き換え
ミドルウェアとサンプルアプリケーションを組み込んだユーザーランドイメージを 日新システムズ EW-ENET Lite - Armadillo-Box WS1用評価版からダウンロードしてください。
ダウンロードにはアカウント登録およびArmadillo-Box WS1の購入製品登録を行う必要があります。
イメージはデモ用です。動作は一切保証されていません。自己責任の上でご利用ください。
製品マニュアルの「フラッシュメモリの書き換え方法」を参考に、2台のArmadillo-Box WS1のユーザーランドイメージの書き換えを行ってください。
ダウンロード後、アーカイブを展開すると、カーネルイメージも含まれていますが、カーネルの書き換えは不要です。
コントローラ(Wi-SUNデバイス)動作用と、デバイスシミュレータ(Wi-SUNコーディネータ)動作用で共通のユーザーランドイメージを使用します。
イメージの書き換え後、製品マニュアルの「起動」と「ログイン」を参考に、起動・rootユーザーでログインしてください。
2. 動作確認手順
2-1. デバイスシミュレータ(Wi-SUNコーディネータ)設定
2-1-1. アプリケーションの起動
デバイスシミュレータ動作用 Armadillo-Box WS1のシリアルコンソールから、以下のコマンドを実行しアプリケーションを起動します。
[armadillo ~]# bdev_demo
起動後、Wi-SUNデバイスの初期化処理が実行され、以下のログが表示されます。
bdev_demo app version - 0.10
Wi-SUN Device Init ...
SKSTACK VER : 1.2.10
SKAPP(FW) VER : rev26
Wi-SUN Device Init Done.
MAC : 001D12900003C1F6
V6ADDR : FE80:0000:0000:0000:021D:1290:0003:C1F6
help - show help
vers - show version
pw - pw <password> : set authentication password
id - id <rbid> : set RouteB ID
pid - pid <Pan ID> : set Pan ID
obj - obj <EOJ> add echonet lite object
start - start wi-sun comm
set - set <EOJ> <EPC> <value>: set property value
quit - quit bdev_demo
bdev demo >
2-1-2. デバイスシミュレータ側MACアドレスとIPv6アドレスの確認
ログにデバイスシミュレータ側のMACアドレスとIPv6アドレスが表示されるので値を覚えておきます。
上記のログでは以下になります。
項目 | 値 |
---|---|
MACアドレス | 001D12900003C1F6 |
IPv6アドレス | FE80:0000:0000:0000:021D:1290:0003:C1F6 |
2-1-3. ECHONET Lite 機器の追加
コンソールから以下のコマンドを実行することでECHONET Lite 機器を追加することができます。
今回は、一例として低圧スマート電力量メータクラス(0x028801)を追加します。
bdev demo > obj 0x028801
2-1-4. Wi-SUN Bルート PANA接続待ちの開始
コンソールから以下のコマンドを実行し、 Wi-SUN Bルート PANA接続待ちを開始します。
bdev demo > start
PANA接続待ち用の設定は、以下の値をデフォルト値として動作します。
項目 | 設定値 |
---|---|
認証ID | 00112233445566778899AABBCCDDEEFF |
認証パスワード | 0123456789AB |
CH | ※EDスキャンを行い、空きCHを使用します。 |
PAN ID | CAFE |
接続待ちを開始すると、以下のログが表示されます。
COORDINATOR START!!
EW-ENET Lite neo device service start!
2-2. コントローラ(Wi-SUNデバイス)設定
2-2-1. アプリケーションの起動
コントローラ動作用 Armadillo-Box WS1のシリアルコンソールから以下のコマンドを実行しアプリケーションを起動します。
[armadillo ~]# broute_demo
起動後、Wi-SUNデバイスの初期化処理が実行され、以下のログが表示されます。
broute_demo app versioj - 0.10
Wi-SUN Device Init ...
SKSTACK VER : 1.2.10
SKAPP(FW) VER : rev26
Wi-SUN Device Init Done.
MAC : 001D12900003C1DF
V6ADDR : FE80:0000:0000:0000:021D:1290:0003:C1DF
help - show help
vers - show version
pw - pw <password> : set authentication password
id - id <rbid> : set RouteB ID
start - start wi-sun comm
list - wi-sun coordinator list
get - get <EPC> : get property
quit - quit broute_demo
broute demo >
2-2-2. コントローラ側MACアドレスとIPv6アドレスの確認
ログにコントローラ側のMACアドレスとIPv6アドレスが表示されるので値を覚えておきます。
上記の例では以下になります。
項目 | 値 |
---|---|
MACアドレス | 001D12900003C1DF |
IPv6アドレス | FE80:0000:0000:0000:021D:1290:0003:C1DF |
2-2-3. Wi-SUN Bルート PANA接続の開始
コンソールから以下のコマンドを実行し、Wi-SUN Bルート PANA接続開始します。
broute demo > start
PANA接続用の設定は、以下の値をデフォルト値として動作します。
項目 | 設定値 |
---|---|
認証ID | 00112233445566778899AABBCCDDEEFF |
認証パスワード | 0123456789AB |
接続待ちを開始すると、以下のログが表示されます。
PANA AUTH START!!
2-3. Wi-SUN Bルート通信の開始確認
2-3-1. コントローラ側の接続確認
コントローラー側のコンソールに以下のログが出力されていることを確認します。
AUTH ※デバイスシミュレータ側のIPv6アドレス※
AUTH SUCCESS!
EW-ENET Lite neo Controller service start!
※2-1-2. デバイスシミュレータ側MACアドレスとIPv6アドレスの確認で確認したデバイスシミュレータ側のIPv6アドレスが表示されます。
2-3-2. デバイスシミュレータ側の接続確認
PANA接続が完了すると、デバイスシミュレータ側のコンソールに以下のログが出力されます。
PANA AUTH SUCCESS : ※コントローラー側のIPv6アドレス※
※2-2-2. コントローラー側MACアドレスとIPv6アドレスの確認で確認したコントローラ側のIPv6アドレスが表示されます。
2-4. ECHONET Lite 通信
2-4-1. コントローラからのデータ取得
コントローラ側でコンソールから以下のコマンドを実行すると、デバイスシミュレータからデータを取得することが出来ます。
broute demo > get <EPC>
<EPC>
は、ECHONET Lite で規定されているプロパティコードを16進数で指定します。
コマンドを実行すると、以下のログが表示されます。
- デバイスシミュレータへの送信電文 : SND
- デバイスシミュレータからの受信電文 : RCV
例として、動作状態(EPC:0x80)を取得した場合のコマンドとログを次に示します。
broute demo > get 80
SND : 10 81 00 02 05 ff 01 02
88 01 62 01 80 00
RCV : 10 81 00 02 02 88 01 05
ff 01 72 01 80 01 30
2-4-2. コントローラへのデータ応答確認
デバイスシミュレータ側では、コントローラ側からデータ取得の要求を受信した場合、以下のログが表示されます。
- コントローラからの受信電文 : RCV
- コントローラへの応答電文 : SND
動作状態(EPC:0x80)を取得要求を受信した場合のログを次に示します。
RCV : 10 81 00 02 05 ff 01 02
88 01 62 01 80 00
SND : 10 81 00 02 02 88 01 05
ff 01 72 01 80 01 30
2-4-3. デバイスシミュレータのデータ更新
デバイスシミュレータ側のコンソールから以下のコマンドを実行すると、デバイスシミュレータのデータを更新することが出来ます。
bdev demo > set 0x028801 <EPC> <データ>
<EPC>
は、ECHONET Lite で規定されているプロパティコードを16進数で指定します。- <データ> は、設定する値を16進数で指定します(※<データ>の先頭には、"0x"を指定しないでください)。
動作状態(EPC:0x80)をOFF(0x31)に設定する場合のコマンド例を次に示します。
bdev demo > set 0x028801 0x80 31
なお、更新したプロパティが状変アナウンスの対象であった場合自動で通知電文を送信します。
例として動作状態(EPC:0x80)をOFF(0x31)を通知する場合の通知電文を次に示します。
INF : 10 81 00 00 02 88 01 0e
f0 01 73 01 80 01 31
2-5. Wi-SUN Bルート通信の終了
2-5-1. コントローラの接続終了
コントローラー側のコンソールから以下のコマンドを実行し、接続を終了します。
同時にアプリケーションが終了します。
broute demo > quit
[armadillo ~]#
コントローラ側で接続を終了すると、デバイスシミュレータ側で以下のログが表示されます。
PANA AUTH QUIT : ※コントローラー側のIPv6アドレス※
※2-2-2. コントローラー側MACアドレスとIPv6アドレスの確認で確認したコントローラ側のIPv6アドレスが表示されます。
2-5-2. デバイスシミュレータの接続終了
デバイスシミュレータ側のコンソールから以下のコマンドを実行し、接続を終了します。
同時にアプリケーションが終了します。
bdev demo > quit
[armadillo ~]#
3. リファレンス: デバイスシミュレータ(bdev_demo)の設定・動作について
3-1. 設定の変更
3-1-1. Bルート認証IDの変更
コンソールから以下のコマンドを実行すると、認証IDを変更することができます。
bdev demo > id <認証ID>
また、"id" のみを実行すると、現在の認証IDを確認することができます。
bdev demo > id
RouteB ID : 00112233445566778899AABBCCDDEEFF
3-1-2. Bルートパスワードの変更
コンソールから以下のコマンドを実行すると、パスワードを変更することができます。
bdev demo > pw <パスワード>
また、"pw" のみを実行すると、現在のパスワードを確認することができます。
bdev demo > pw
password : 0123456789AB
3-1-3. Pan IDの変更
コンソールから以下のコマンドを実行すると、Pan IDを実行することができます。
bdev demo > pid <Pan ID>
また、"pid" のみを実行すると、現在をPan IDを確認することができます。
bdev demo > pid
panid : CAFE
なお、デフォルトでは Pan ID は自動設定であり、この状態で確認を行うと以下のログが表示されます。
bdev demo > pid
panid is auto
3-2. ログについて
デバイスシミュレータでは、動作中に以下のログが表示されます。
3-2-1. PANA認証接続待ち開始
PANA認証の接続待ちを開始するときに、使用する認証IDとパスワードを表示します。
Route-B ID : 00112233445566778899AABBCCDDEEFF
Password : 0123456789AB
3-2-2. EDスキャン
空きCHの検索を行うときに、以下のログを表示します。
EDSCAN START!
CH [33] rssi[69]
CH [34] rssi[33]
CH [35] rssi[31]
CH [36] rssi[22]
CH [37] rssi[27]
CH [38] rssi[40]
CH [39] rssi[37]
CH [40] rssi[27]
CH [41] rssi[36]
CH [42] rssi[37]
CH [43] rssi[30]
CH [44] rssi[31]
CH [45] rssi[37]
CH [46] rssi[38]
CH [47] rssi[33]
CH [48] rssi[44]
CH [49] rssi[37]
CH [50] rssi[30]
CH [51] rssi[37]
CH [52] rssi[36]
CH [53] rssi[28]
CH [54] rssi[36]
CH [55] rssi[37]
CH [56] rssi[37]
CH [57] rssi[23]
CH [58] rssi[31]
CH [59] rssi[29]
EDSCAN END!
3-2-3. PANA認証接続待ちの開始
PANA認証の接続待ちを開始すると、以下のログを表示します。
CH : <使用 CH>
Pan ID : <使用 Pan ID>
COORDINATOR START!!
EW-ENET Lite neo device service start!
3-2-4. PANA接続完了
PANA接続が完了すると、以下のログを表示します。
PANA AUTH SUCCESS : <接続相手のIPv6アドレス>
3-2-5. PANA接続終了
PANA接続が終了すると、以下のログを表示します。
PANA AUTH QUIT : <接続相手のIPv6アドレス>
3-2-6. ECHONET Lite 通信
ECHONET Lite 通信では、以下のログを表示します。
- 送信電文
SND : XX XX XX ...
- 送信電文(一斉同報)
INF : XX XX XX ...
- 受信電文(応答、一斉同報)
RCV : XX XX XX ...
3-3. bdev_demo コマンドヘルプ
各コマンドのヘルプを以下に記載します。
help - show help
vers - show version
pw - pw <password> : set authentication password
id - id <rbid> : set RouteB ID
pid - pid <Pan ID> : set Pan ID
obj - obj <EOJ> add echonet lite object
start - start wi-sun comm
set - set <EOJ> <EPC> <value>: set property value
quit - quit bdev_demo
3-3-1. help
コマンド一覧とヘルプを表示します。
3-3-2. vers
ソフトウェアバージョンを表示します。
3-3-3. pw
- a) 認証パスワードの更新
bdev demo > pw <パスワード>
- b) 認証パスワードの確認
bdev demo > pw
3-3-4. id
- a) 認証IDの更新
bdev demo > id <認証ID>
- b) 認証IDの確認
bdev demo > id
3-3-5. pid
- a) Pan IDの更新
bdev demo > pid <Pan ID>
- b) Pan IDの確認
bdev demo > pid
3-3-6. obj
- a) ECHONET Lite 機器の追加
bdev demo > obj <EOJ>
- b) ECHONET Lite 機器一覧とプロパティの確認
bdev demo > obj
3-3-7. start
PANA認証接続待ちを開始します。
3-3-8. set
対象の機器オブジェクトのプロパティを更新します。
bdev demo > set <EOJ> <EPC> <データ>
3-3-9. quit
PANA認証接続とデモソフトウェアを終了します。
4. リファレンス: コントローラ(broute_demo)の設定・動作について
4-1. 設定変更
4-1-1. Bルート認証IDの変更
コンソールから以下のコマンドを実行すると、認証IDを変更することができます。
bdev demo > id <認証ID>
また、"id" のみを実行すると、現在の認証IDを確認することができます。
bdev demo > id
RouteB ID : 00112233445566778899AABBCCDDEEFF
4-1-2. Bルートパスワードの変更
コンソールから以下のコマンドを実行すると、パスワードを変更することができます。
bdev demo > pw <パスワード>
また、"pw" のみを実行すると、現在のパスワードを確認することができます。
bdev demo > pw
password : 0123456789AB
4-2. ログについて
コントローラでは、動作中に以下のログが表示されます。
4-2-1. アクティブスキャン開始
接続先の検索のため、アクティブスキャンを実行するときに 以下のログを表示します。
ACTIVE SCAN START!!
CH : <CH>
Pan ID : <Pan ID>
MAC : <検出機器のMACアドレス>
※ネットワーク上に複数の接続候補(Wi-SUNコーディネータ)が存在する場合、上記ログも複数表示されます。
4-2-2. PANA認証開始
PANA認証を開始するときに、以下のログを表示します。
PANA AUTH START!!
AUTH <接続相手のIPv6アドレス>
4-2-3. PANA認証・接続完了
PANA認証が完了したときに、以下のログを表示します。
AUTH SUCCESS!
EW-ENET Lite neo Controller service start!
また、アクティブスキャンで検出した接続先候補の一覧と接続相手( )を表示します。
-- COORDINATOR 01 --
ADDR : 001D12900003BC06
Channel : 33
Pan ID : 1234
-- COORDINATOR 02 -- <used>
ADDR : 001D12900003C1F6
Channel : 36
Pan ID : CAFE
4-2-4. ECHONET Lite 通信
ECHONET Lite 通信では、以下のログを表示します。
- 送信電文
SND : XX XX XX ...
- 受信電文(応答、一斉同報)
RCV : XX XX XX ...
4-3. broute_demo コマンドヘルプ
各コマンドのヘルプを以下に記載します。
help - show help
vers - show version
pw - pw <password> : set authentication password
id - id <rbid> : set RouteB ID
start - start wi-sun comm
list - wi-sun coordinator list
get - get <EPC> : get property
quit - quit broute_demo
4-3-1. help
コマンド一覧とヘルプを表示します。
4-3-2. vers
ソフトウェアバージョンを表示します。
4-3-3. pw
- a) 認証パスワードの更新
broute demo > pw <パスワード>
- b) 認証パスワードの確認
broute demo > pw
4-3-4. id
- a) 認証IDの更新
broute demo > id <認証ID>
- b) 認証IDの確認
broute demo > id
4-3-5. start
PANA認証接続待ちを開始します。
4-3-6. list
アクティブスキャンで検出した接続候補一覧と、接続中の情報を表示します。
4-3-7. get
接続相手のデバイスシミュレータのプロパティを取得します。
broute demo > get <EPC>
4-3-8. quit
PANA認証接続とデモソフトウェアを終了します。