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Armadillo-IoTゲートウェイ, Armadillo-X1をバッテリーバックアップして停電・瞬低に備える

at_yuma.arakawa
2017年12月1日 8時44分
寄稿記事

※本ブログは、社外ライターが知識・ノウハウを元に執筆したものです。
記載内容を参考に開発・製品化される場合は、お客様ご自身の責任において、事前に十分な検討および試験を実施してください。記載内容の信頼性および正確性、製品本体またはArmadilloと組み合わせて使用した場合におけるあらゆる結果について、アットマークテクノはお客様に対し何らの保証も行いません。

1.はじめに

日本は停電が少ないといわれますが、落雷などの自然災害やブレーカーが落ちてしまうなど、停電はどうしても発生してしまいます。過去の統計ですと年間0.17回、停電時間は19分停電が発生しているそうです[*1] 。
設置先で何かが起きているから確認したいときに、電源が給電できていないために確認ができないというのは、アプリケーションによっては避けたい事象です。
また、工場など大電力を消費する機器が近くで動作している環境では、瞬間的に電圧が低下または停止する「瞬低」がまれに発生します。瞬低の程度によっては、機器が異常な挙動を起こしたり、突然リセットしたりしてしまうなどの障害が発生します。瞬低は停電に比べ人が認知しにくいため、障害の原因を特定するのが難しい厄介な問題です。
ここでは、ビルなどの非常口に設置してある非常灯にも使われている、ポピュラーで信頼性の高いバックアップ回路の例をご紹介します。

[*1] 「電力品質とその限度値」電気設備学会誌Vol. 25 (2005) No. 10より。

※本回路は停電の長期化により、バッテリーが空の状態が続くことで、場合によっては過放電となりバッテリーに軽度のダメージを与えることがあります。今回は、たまにしか起きないという前提条件のもと、ダメージは軽度であるため、バッテリーの過放電保護のない割り切った設計になっています。

2.停電・瞬低の対策方法の紹介

2.1 Armadillo-IoTゲートウェイのバッテリーバックアップ回路

例えば、Armadillo-IoTゲートウェイに追加するなら、一般的に、以下のような簡単な構成のバッテリーバックアップ回路になります(あくまで例なので、実際に組み込む場合は十分に検討・試験を行ってください)。

通常、Armadillo-IoTゲートウェイには12VのACアダプターをつなぎますが、これらの間に以上記の回路を追加します。
この回路に必要な部品は以下の通りです。

  • ショットキーバリアダイオード 5A以上 2本
  • 抵抗 51Ω 1/2W
  • 単三ニッケル水素充電電池 8本
  • 単三8本電池ボックス

すべて通信販売などで購入可能な一般的な部品で構成されているので、手軽に試すことが可能です。

2.2バッテリーバックアップ回路の動作

前節でご紹介した回路では、トリクル充電という弱い電流で常時バッテリーを充電しておき、停電時には自動的に満充電のバッテリーから機器に電力が供給されます。
バッテリーに切り替わると、供給される電圧がACアダプターの12Vからバッテリー電圧である9.6Vに低下してしまいますが、Armadillo-IoTゲートウェイは8Vから26.4Vと幅広い電源電圧の範囲に対応しているため、バッテリーに切り替わっても問題なく動作が継続されます。

また、上記の回路では、バッテリーが空になったときのバッテリー電圧が8Vとなります。Armadillo-IoTゲートウェイの電源電圧は8Vまで対応しているので、バッテリーが空になるまで電力を最大限利用して動作が継続されます。
なお、この回路は充電がゆっくり行われるため、満充電になるには2,3日はかかります。頻発する停電には対応できませんが、まれにしか起きない停電には効果的な回路となります。[*2]

[*2] 満充電の場合で、Armadillo-IoTゲートウェイG3で通常動作中(5.8W)なら、以下の計算式により、理論上、3時間程度動作可能と想定できます。
5.8W/(9.6V-0.4V)=0.63A
2000mAh/0.63A=3.1h

2.3 Armadillo-X1のバッテリーバックアップ回路

Armadillo-X1でも部品を追加することで、同様のバッテリーバックアップを実現することができます。
Armadillo-X1の電源電圧は5V専用です。このため上記の回路に12Vから5Vに変換するDC-DCコンバータを追加し、Armadillo-X1に供給します。

DC-DCコンバータは、Armadillo-X1に電流を十分に供給できる容量のあるものを選びます。Armadillo-X1と追加したアドオンモジュールなど、それぞれの最大電流の合計よりも十分に容量が大きいものを選んでください[*3] 。DC-DCコンバータは常時動作して電力を供給する重要な部品なので、供給能力に十分余裕があるものを選定する必要があります。

[*3] 例えば、RS コンポーネンツ DC-DCコンバータ 出⼒電流の絞り込み機能を使えば、⽬的のものを簡単に探し出せます。

3.おわりに

通常のPCの場合はUPSなどの大がかりな無停電電源装置が必要ですが、Armadilloシリーズはバッテリーで動作できるため、簡単な回路を追加することで、電源のバックアップを実現できます。
なお上記の回路は、あくまで基本的な例として、必要最低限の構成でご紹介しています。実際に機器を開発するときは、システム要件に合わせて、パラメータの検討・再設計を行ってください。

寄稿記事

※本ブログは、社外ライターが知識・ノウハウを元に執筆したものです。
記載内容を参考に開発・製品化される場合は、お客様ご自身の責任において、事前に十分な検討および試験を実施してください。記載内容の信頼性および正確性、製品本体またはArmadilloと組み合わせて使用した場合におけるあらゆる結果について、アットマークテクノはお客様に対し何らの保証も行いません。

ライターご紹介:
渡辺 健一:前職大手センサーメーカーにて、防災防犯等のセンサー機器の研究開発に従事。アナログ回路を得意とし電装系の設計を担当してきた。現在は独立し、回路設計コンサルタントを行なっている。
http://kohacraft.com/